大阪の中心地「船場」周辺では繊維製品や機械工具を取り扱う卸売関連企業が特定地区に集中立地して独特の「問屋街」を形成してきました。戦後の高度経済成長を支えてきた大阪発祥の大手商社である伊藤忠商事、丸紅、日商岩井、トーメン、日綿実業、兼松江商などもこの船場で繊維産業などを中心に大きく発展を遂げた企業の好例となっています。
発達・集積してきた卸売業や小売業は大阪の商業を支えてきた産業形態といえます。経済産業省が調査している「商業統計表」によると、大阪の卸・小売業年間商品販売額は全国の都道府県の中でも大きな比重を占めています。大阪は全国の流通の中心地として1960年には全国卸売販売額の約3割を占めていました。その後、繊維産業の衰退や大手総合商社の東京移転などもありましたが、直近の業種別販売額でも化学製品、電気機械器具、鉄鋼製品などの販売額も多く、繊維品、衣服では販売額の全国シェアがそれぞれ5割弱、2割弱と引き続き高い割合を占めています。また卸売業の集積度を図る指標である中心性比率は高水準を保ち、関西圏などにおける流通の中枢機能を担っています。
大阪の産業の歴史
大阪は古くから水運が発達し、京都や奈良、そして江戸や北海道とも結ぶ船が行き交い、人やモノが集まる場所でした。このため必然的に「商いの精神」が生まれ、様々な産業が発達しました。特に明治時代以降になると、国の殖産興業政策の影響で大阪に官営紡績工場が置かれたこともあり、大阪では、紡績・織物・ニット(メリヤス)・縫製などの繊維産業が大きく発達し、大阪は紡績・合繊企業、商社、糸商、織物問屋、卸商などの集積が見られる繊維関連取引の中心地となりました。また同じ時期、大阪では、造兵司や造幣局も設置され、その後の大阪の機械産業や化学産業の発展に大きく影響を与えることになりました。
流通の中心地、大阪
高い技術力を持つ大阪の製造業
大阪市の製造業の特徴としては下記の要素が上げられます。
-
基礎素材型工業が多い
製造業を「基礎素材型」、「加工組立型」、「生活関連型」の3つに分類すると、大阪市は製造品出荷額などで他都市と比較すると、「基礎素材型」が割合が高く、中でも化学工業が突出して高い。
-
高付加価値型
付加価値率(製造品出荷額などに占める付加価値額の割合)が東京都に次いで高水準で、全国の水準を大きく上回る。
-
高密度な集積地域
市内の工場集積地である東部4区(東成、生野、城東、平野の4区)の事業所数、従業者数、製造品出荷額などは1㎢あたりの集積度が全国トップクラスで、全国有数の工業集積地である東大阪市や東京都大田区を上回っており、高密度な工業集積を形成している。
市内各地域のものづくりの特徴
大阪の産業集積状況
大阪市はビジネス用途の土地の割合が1/3以上を占めるため、産業集積の密度が他都市よりも高く、東京都区部と比較すると、1㎢あたりでは、製造品出荷額などで約3.5倍、製造業事業所数で約1.3倍、卸売業事業所数や百貨店販売額では約1.3~1.4倍となっています。
大阪の産業集積の強み① - 医療・医薬関連産業
大阪は「くすりの町」として有名な道修町(どしょうまち)を中心に、グローバルな大手製薬企業をはじめとする医薬品関連産業、医療機器産業及びそれらを支える化学・機械・金属などの製造業が集積しており、特に医薬品生産高は大阪府全体では全国3位となっています。また、医療機器開発などライフサイエンス関連産業を支える高いものづくり技術とバランスのある産業が集積しています。
-
■医薬品関連産業の全国シェア(都市間比較)
大阪市の医薬品関連産業の集積は、製造業、卸売業で顕著。
-
■医薬品生産額が多い上位5府県の状況
・大阪府の医薬品生産額は増加基調を持続し、2018年には
全国3位。 ・大阪府は、国内の自社製造が多いことが特徴で、同分野で
2018年には静岡県に次いで2位となる。
企業集積だけではなく、大阪は彩都ライフサイエンスパークや北大阪健康医療都市(健都)など医療クラスターの形成が進んでいるため、医療・健康の関する最適な環境が整っています。
特に大阪は再生医療分野において、基礎研究や臨床研究で平成26年の薬事法改正による「条件・期限付き承認制度」の導入などにより、日本が世界をリードする環境が整備されており、このポテンシャルを活かして、企業間連携を促進し、関西における「再生医療の実現加速化」と「新産業の創出」を目指しています。この動きを受けて、平成27年より全国初の再生医療の実現加速化に向けた企業間連携を支援するための「関西再生医療産業コンソーシアム(略称KRIC)」が立ち上がりました。
※関西再生医療産業コンソーシアム(KRIC: Kansai Regenerative medicine Industrial Consortium)の登録機関数:242機関(令和元年7月現在)
PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)関西支部が機能拡充!
平成28年6月よりPMDAの日本唯一の支部である関西支部では機能拡充により、東京本部とつなぐテレビ会議システムが導入され、薬事戦略相談や治験相談などの薬事に関する各種相談(対面助言)が可能になりました。大阪では創薬支援ネットワークとPMDA関西支部の連携による医療分野などの成長支援を行っています。
大阪の産業集積の強み② - 化学産業、大阪を支える高付加価値産業
大阪市の製造業の特徴として、化学・金属などの「基礎素材型」産業の占める割合が高く、特に化学工業の割合は他都市に比べて大きくなっています。都道府県別化学工業の統計を見ても、大阪は出荷額こそ2位ですが、事業所数と従業員数は全国1位であり、大阪産業の強みを支える基盤であると言えます。
-
■大阪市内の製造品出荷額の分野別構成比(2017年)
出所:大阪市「大阪の経済2020年版」・経済産業省「平成30年工業統計表」
-
■都道府県別化学工業の事業所数・従業員・出荷額(2016年)
出所:経済産業省「平成28年経済センサス-活動調査」
大阪の産業集積の強み③ - フルセット型の産業構造
基礎素材型の産業割合が高いものの、他の大都市と比較して基礎素材型、加工組立型、生活関連型など多様な業種が厚みを持ってバランスよく集積しているフルセット型の産業構造であるという点も大阪の特徴です。製造機械の一つ一つの部品から最終製品まで、大阪で作ることができないものはないといわれています。機械金属関係を基盤として、幅広く厚みのある技術の集積が可能にする地域内分業が、次々と新たな技術・製品を生み出す大阪産業の活力の源となっています。大阪の成長産業であるライフサイエンス産業や新エネルギー産業、ヘルスケア、ロボット産業の強みを支えているのも、このような化学・金属関連産業をはじめとした厚みのある産業集積にあるのです。
大阪の産業集積の強み④ - 環境・エネルギー関連産業
大阪・関西地域には、環境・エネルギー関連の企業や研究機関などが集積しており、中堅・中小企業も含めて大きなポテンシャルがあります。特に太陽電池・リチウムイオン電池では高いシェアを保持しています。
-
■リチウムイオン電池の輸出額
近畿圏には多くのリチウムイオン電池の工場が立地しており、リチウムイオン電池の輸出額は大阪港と関西空港の合計で全国43.7%を占める。
平成28年には独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の世界最大級の大型蓄電池システム試験評価施設(NLAB)が大阪ベイエリア咲洲コスモスクエア地区に開設され、試験サービスが開始されました。今後大阪ではこの蓄電池を含むエネルギー分野の発展が大きく期待されています。
バッテリー戦略推進センター
大阪ベイエリアコスモスクエア地区にある大阪府咲洲庁舎(さきしまコスモタワー)内には、大阪・関西が有する蓄電池、水素・燃料電池関連産業のポテンシャルや国際戦略総合特区制度などを活用し、バッテリー産業の振興に取り組むバッテリー戦略推進センターが2012年に開設されました。民間出身の専門家を中心に、国や業界団体、支援機関などとも連携しながら、主として下記のような活動を行っています。
・蓄電池、水素・燃料電池分野にかかる事業参入や技術面での課題などの相談対応。
・バッテリーの新たな市場づくりに向けたプロジェクト創出支援。(実証フィールドや規制緩和など)
・バッテリーサロン(平成28年9月から稼動開始)を中心に、NLABを軸にした試験・認証ビジネスの創出支援や蓄電池関連の集積地域形成に向けた誘致活動などの推進。
成長産業分野の推進
大阪では、健康・医療産業分野、環境・新エネルギー分野、ロボットやIoT関連産業などのさらなる発展が期待される成長産業分野を推進するとともに、海外から多くの人・企業を呼び込める関西を目指しています。