進出企業紹介
進出企業紹介
2022/08/08
ハイアールグループ・日本地域
ハイアールグループ・日本地域
ハイアールグループ・日本地域 CEO 杜 鏡国(ト キョウコク)氏インタビュー


Haier(ハイアール)ブランドで家電事業を手掛ける世界大手ハイアールグループ(海爾集団) は、2002年に大阪に日本法人を設立し、日本進出を果たしました。
このたび、同社の日本進出に対する思いや、グローバル企業から見た日本市場の特徴、また大阪の将来への期待などについて、ハイアールグループの日本地域CEO、杜鏡国(ト キョウコク)氏にお話を伺いました。
杜 鏡国(ト キョウコク)
1963年生まれ、中国山東省青島市出身。 山東工業大学(現山東大学)機械学部卒業、シンガポール国立大学経営学部EMBA修了。
1986年 青島冷蔵庫製造工場(現ハイアールグループ)入社。
1989年 青島冷蔵庫製造工場技術部責任者。
1992年 ハイアールグループアフターサービスセンター所長、総経理。
1993年 ハイアールグループ広告芸術センター(マーケティング)所長、ハイアールグループ販売会社総経理。
2002年 ハイアールジャパンセールス株式会社取締役に就任。
2010年 ハイアールジャパンセールス株式会社代表取締役社長に就任、同年ハイアールグループ副総裁就任。
その後ハイアールアジアインターナショナル株式会社代表取締役社長、ハイアールアクアセールス株式会社(現アクア株式会社)代表取締役会長等を経て、2016年にはアクア株式会社代表取締役社長兼CEOに就任した。
1)御社のご紹介をお願いいたします。
ハイアールグループは、中国の山東省青島市で1984年に創業された総合家電メーカーで、現在は全世界の従業員は10万人近く在籍し、大型白物家電の年間生産量は8,000万台、冷蔵庫だけでも3,000万台、生産量及び生産キャパは世界最大の家電メーカーです。日本の旧三洋白物家電事業、アメリカGE、ニュージーランドのフィッシャー・アンド・パイケルなどの買収を含め、7つのブランドを全世界に展開し、とくに世界の大型家電の販売台数については、13年連続で家電ブランド1位となりました。さらに家電事業だけでなく、金融、不動産、医療、文化などの領域にも幅広く事業展開しています。
「ブランド戦略」、「多角化戦略」、「グローバル戦略」、「グローバルブランド戦略」、「ネットワーク戦略」という5つの発展ステージをたどり、2019年から「エコブランド戦略」という6つ目のステージに入り、世界的なIoTエコブランドへと成長することへ邁進してまいります。
2)2002年の日本進出からの20年を振り返られて、どのようなご感想をお持ちでしょうか。
日本での事業展開については、今年Haierは20周年、AQUAは10周年となりました。
Haierブランドは、グローバルのリソースを日本に持ち込み、日本の消費者に個性、高性能及びAQUAとの差別化を提供できると考えています。AQUAブランドは高級ブランドとして、2012年に日本で生まれたブランドです。日本の品質及び技術力を日本からグローバルへ発信したいと思っています。
ハイアールグループ創業以来37年間、「起業家精神」を大切にしてきました。その「起業家精神」が社内で浸透しており、社員の皆さんが起業家としての意識を持って日々働いています。
2002年の日本市場参入時は一回目の創業として、日本唯一の外資ブランドとして、隙間商品から始まりました。2012年は三洋とのM&Aによる二回目の創業で、三洋の冷蔵庫事業を再生、日本市場唯一のWブランド展開のメーカーとして発足し、日本に研究開発・製造・販売といった「三位一体」の体制を確立しています。そして2022年、三回目の創業としてハイエンドシフトをしつつ、日本における総合家電メーカーとして邁進していきます。
2021年までの日本市場における白物家電の累計出荷台数は2,300万台余り。この数年は年間200万台の販売量を推移しています。日本の消費者から信頼していただき、当社の経営理念に関しても評価をしていただけていることに感謝しています。
3)中国企業としての日本進出にあたり苦労されたこと、工夫された点があればお聞かせください。
世の中の全ての企業、特にM&Aを経た企業にとって、過去の既存経営の考え方を継続するだけではうまく行きません。旧モデルの延長線での革新ではなく、過去にはない斬新な考え方でなければ、時代の変化に追いつきません。
経営の改革、制度の改革は全ての角度、全てのプロセス、全員参加の形で、全社の隅々まで浸透していきます。「破、立、融」を通じて、色々な変革を実施してまいりました。
「破」…時代に遅れている制度・考え方を破くこと。例えば、年功序列制度などを廃止しました。
「立」…日本における優良な伝統。例えばチームワーク、協力体制、品質意識などを伝承します。一方、高い目標にチャレンジすれば、誰でも昇進昇格できる制度を立ち上げました。「誰でもCEOになれる」ということです。社員一人一人が自らCEOとして仕事に向き合っています。
「融」…日中企業文化の融合、考え方の融合、意識の融合。特に文化の融合は最重要と認識しています。
会社の目標達成と個人収入を結びつけ、ウィンウィンの関係で会社の利益を個人にシェアします。多様性のある雇用形態、目標意識のメカニズムを設けることによって、柔軟性及び活力のある組織を構築し、社員のやる気向上に繋げています。
4)世界に7つのブランドを展開するグローバル企業から見た日本市場の特徴をお聞かせください。
1998年から、ハイアールグループはグローバル戦略を本格化し、3つのスローガンを掲げました。「海外進出、ローカル化、ハイエンド化」です(中国語では走出去、走進去、走上去)。
最初の海外進出はドイツでした。中国他社の組み立て輸出方式と異なり、ハイアールは技術を吸収したうえで、自社商品の輸出により、品質で勝負しました。ローカル化の象徴としては、アメリカでの工場建設です。最後にハイエンド化のスタートは、日本市場の進出となります。
ハイアールは、初めて日本進出した中国家電メーカーであり、初めて銀座に看板広告を掲出した中国企業であり、中国家電ブランドとして自社商品を日本市場に初めて導入した企業です。
日本市場は当時競争が激しく、LGやGEなど外資ブランドが続々と撤退していました。世界で最も厳しいと言われる日本の消費者からの評価を得てこそグローバル戦略の成功といえます。また、日本市場は消費者のレベルも高いため、消費者のニーズを満たすために努力しました。中国で成功したと言っても、日本ユーザーの心の中でHaierブランドをライトアップすることは難しい。Haierブランドを常に褒めてもらえるように努力してまいります。
5)大阪のビジネス環境や住環境についてはどのようにお感じですか。
大阪は私にとって馴染み深い都市です。十数年ほど住んでおりましたが、3年前から京都に移住しました。勤務地は近代的な大阪で、日本の歴史と文化を代表する京都に住むことは最高ではないでしょうか。
大阪は、未来都市に向けて、より良い生活環境を計画してほしいです。もっと大きな規模の都市、国際化の大都市に向けて、第二、第三の「梅田」のような近代都市を建設し、関西2府4県の地域連携をより強化してもらいたいと期待しています。
6)万博開催や大型開発が予定されている大阪の将来に対してどのようなご期待をお持ちですか。
誰でも生活のあらゆるものをネットに繋げる時代が来ています。2025年の大阪・関西万博をきっかけに、大阪もIoT都市にすべきだと考えます。それはハイアールとして、IoT家電への投資のチャンスとも言えます。今後は衣服・食品・住居・交通・健康・教育・介護・医療などを全てネットでつなげるサービスや技術で参入したいと思います。
7)日本における更なる認知度向上のためにお考えのことがあればお聞かせください。
ハイアールは常にユーザーに対する付加価値創造を目標にし、「人単合一」という企業理念を掲げています。各事業部は、ユーザーに対して付加価値を創造しなくてはなりません。また、「永遠に誠心誠意」(中国語:真誠到永遠)、「素早く行動」(中国語:馬上行動)なども、ハイアールの従来からの理念として、ユーザーにも伝わっています。
ハイアールは13年連続で大型家電世界シェアNo.1になっても、日本ではNo.1になっていません。今後ともその目標に向けて、継続的にやり遂げることは私たちのミッションです。
8)グループ創業者の張名誉会長は日本での事業展開においてどのようなことを期待されていますか。
ハイアール創業者・張瑞敏名誉会長は「資本での合併自体はシンプルだが、成否を分けるのは、文化の統合」と言っています。ハイアールは三洋電機の会社だけでなく社員とその家族も受け入れ、単に企業の買収ではない、三洋ブランドの技術を発展させるための新しい船出に踏み出したのです。
例えるなら、異なる人と人、企業と企業の文化がサラダのように集まり、ひとつのドレッシングで繋がったということ。企業理念の「人単合一」がこれを表しています。「人」は従業員、「単」はユーザーニーズを表しています。「文化の融合」はこれからも変わらないハイアールの理念です。
グローバル経済界で評価された、張名誉会長の「人単合一」の経営理念は、徹底した現地化に繋がり、またそれを成功させて来ました。全ての従業員はユーザーニーズに応えるため、価値を創造します。全プロセスにおける目標を立て、各機能部門が結束し、フラットかつオープンな組織を作ります。目標以上の利益を全員でシェアできるメカニズムを構築します。
ハイアールグループには「現地化」という経営方針があります。人材を現地化し、商品を現地化し、経営戦略も現地化します。現在、中国の本社から日本に駐在している社員は、全体の2%未満、社員のほとんどが、日本で採用した日本人で会社を動かしています。
「人単合一」の理念に基づいた現地化で、改革・創新のメカニズムがあるからこそ、徹底した現地化を進めることができます。
9)日本市場におけるハイアールグループの役割と大阪での今後のご活躍についてお聞かせください。
グローバル拠点のR&Dセンターの一つとして、日本のR&Dセンターは非常に重要な位置付けとされています。
ハイアールは、外資メーカーとしては日本最大級の開発拠点であるハイアールアジアR&Dセンターを設立しました。日本で、研究開発・製造・販売といった「三位一体」の体制を確立しています。また、国際化、高性能、技術性及びデザイン性のある差別化商品を開発しています。当社のR&Dセンターの特徴として、全て自社開発ではなく、一般消費者でも提案ができる、開発に関与できるネットワークを構築しています。
日本市場には引き続き投資を続けることが重要だと考えています。ブランドに対しての投資や商品開発への投資もそうですが、一番重要なのは人材育成に対する投資です。社員にとってやりがいのある仕事、また家族に対しても自慢できるような仕事を通して、特に若者を育てる、早く有能な人材になれるように投資をすることです。
今、時代が変わるスピードが非常に速いです。どの会社も、自分たちが「成功している」とは簡単に言えません。会社に何ができるかというと、時代に合わせて進歩すること。そういう会社しか生き残っていけません。私たちも日本社会にどのように合わせるのか、スピード感を持って正しく戦略を描けるのか。これは非常に重要だと思っています。今までの成功体験を捨ててでも、新しいチャレンジをする気持ちは、非常に重要だと思っています。
今後の展望として、グローバルNo.1ブランド、エコブランド、日本消費者に信頼され、推薦されるブランドを目指します。HaierおよびAQUAブランドは、消費者の生活に寄り添う真のパートナーを目指します。
10)大阪への進出を考える企業様へメッセージをお願いします。
世界各国、各民族、各企業との良好な関係を作り、大阪から革新意識、チャレンジ意識、競争する勇気を出していただきたいです。
世界をリードできる更なる活躍と同時に、収入を上げ消費を盛り上げる、大阪での良い経済循環を期待します。
― 本日はお忙しい中貴重なお話をありがとうございました。今後のますますのご発展をお祈りしております。
2022年8月掲載 ※掲載時時点の情報です。